笑いじわできた

立派な豪邸もいらない
高価な家財もいらない
お金だって何億もいらない
生活に困らないくらいあればいい
今いちばん欲しいものはと聞かれたら
真っ先に答える 人間との会話だと

笑いじわできた
いちばん欲しいものが手に入ったから
笑いじわできた
アナタとの楽しい会話が手に入ったから

いつかは世間を牛耳りたいだと
会話ができない人間は世間を牛耳れないだろ
いつまでたっても管理職に選ばれないだと
傷つきやすく気難しそうな人間は選ばないだろ
いつになったら自分が世間の中心になれるかだと
たわけ者
キャラも才能も半端もんのくせに
極めない人間は真ん中に立てないし
真ん中に立ってもコキ下ろされて
引きずり落とされるのがオチである

顔は知れているが親しくない職場の同僚に
廊下で無視して通り過ぎていかれ
何年もいるのに無視って何様のつもりと思い
同じエレベーターに乗りたくないと
時間を置いて同僚と違うエレベーターに乗る
そんな面倒くさい人間が
世間を動かせるわけないだろ
世間を動かしている人間は
そう簡単に不条理な人間の行動に傷つかないし
受け流しスキルが優れているし
間違っていても堂々と正しいと言い切れるものだ
そんな感じの詩を延々と綴りたいと
悶々としていたけど
欲しいものが手に入ると
無理して作ることもないと諦められる

笑いじわできた
いちばん欲しいものが手に入ったから
笑いじわできた
アナタとの楽しい会話が手に入ったから

バー帰りのエレベーターで
鏡に映る私の顔
そして笑いじわ
でも 誰でもいいわけではないから
いくら人気者でも
合わない人間とは合わないから
いくら厄介者でも
合う人間とは合うから
気の合うアナタと楽しい会話ができること程
最高の幸せはない

笑いじわできた
当たり前だ
いい歳したジジイだから
もっと顔の筋トレしよう
アメンボ赤いなあいうえおって言うけど
黒いアメンボしか知りませんと
車の中で大口開けて言いながら

(2013年)

アマリリス

捨てる手前で
外に置いたら
ここまで咲いた
アマリリス

初夏の日差しが
奇跡を導き
素敵に咲いた
アマリリス

葉っぱがないと
指さされても
それを越えるほど
綺麗な花びら

初夏の日差しが
奇跡を導き
素敵に咲いた
アマリリス

時はひとつの
悩みを膨らまし
時はひとつの
悩みを解き明かす

苦しみ足掻いても
汲み取らない世間
ダメなものはダメ
ならば今を活かそう

みんなと無理に
並ぶのよそう
葉のないハンディ
見劣りしていやだ

だけど孤独は
やっぱり辛い
寂しがり屋は
人ばかりじゃない

葉っぱがないと
指さされても
それを越えるほど
綺麗な花びら

初夏の日差しが
奇跡を導き
素敵に咲いた
アマリリス

(2013年)

ひとでなし

今だべ
今ホンキ出さねば
いづまで経っても被災地だぞと
夏バッパにはっぱをかけられた
だいきっつあん

今だべ
今ホンキ出さねば
いづまで経っても負け犬だぞと
岩合光昭のネコ歩きを見ながら
お魚くわえた オラ

ひい
とお
でえ
なあ
しい
ひとでなし

覚えが悪い新人のオラを教える同僚に
覚えが悪かったら倍返しで教えなさいと
上司がオラにあてつけて嫌みを言いました

業者回りでテント張りの集合に遅れ
作業をしている同僚にお疲れ様と声をかけたら
この役立たずとケリを入れられました

上司に確認してそのとおり電話対応したら
後日オラの対応がクレームになり
聴取され上司に確認しましたと言ったら
そんなこと言った覚えはないと上司は言い切り
責任をオラになすりつけられました

弱いものイジリが好きな同僚に
お前のせいだ
何がお前のせいだか分からないけど
とりあえずお前のせいだと
四六時中言われ続けました

この組織に
白馬の王子様なんていないよねとオンナ達
この組織に
絶世の美女だっていないだろとオトコ達

あっちのひとでなしと
こっちのひとでなしが
卵が先かニワトリが先かごっこ
そんな低レベルな水かけ論は
三春町(まち)の水かけ祭りでやってくれ
頭にほっかむりして
真水でも泥水でもかけ合ってくれ
真水泥水かけ合ってハッスルし合って
最後に万歳三唱くらいはできる
んだべ

気を利かせてふるまっているつもりでも
組織はハタ迷惑だと思っているもんだよ
いくらなめられないようにと見栄を張っても
組織はアンタがナンボの者かお見通しだよ

どの組織にいても
いい人や好きな人や尊敬する人は
自分で潰れるか 人に潰されるかして
人知れず去って行き
結局はクソ生意気なメンツしか残らない
だから 世の中にときめかないんです
人にあこがれも恋心も持てなければ
尊敬の念も抱けない

オラ
やっぱりひとでなしなんでしょうか
でも
世の中にときめかなくても
飯は食わなきゃならないんです
世の中にときめかなくても
人に混じって働いて
銭を稼がなきゃならないんです
世の中にときめかなくても
わずかなオラの応援者より先に死なないように
生き続けなきゃならないんです
だって
今死んだら
人生大逆転の可能性はゼロだけど
生き続けりゃ
人生大逆転の可能性は
ゼロじゃない
んだべ

今だべ
今ホンキ出さねば
いづまで経っても被災地だぞと
夏バッパにはっぱをかけられた
だいきっつあん

今だべ
今ホンキ出さねば
いづまで経っても負け犬だぞと
岩合光昭のネコ歩きを見ながら
お魚くわえた オラ

ひい
とお
でえ
なあ
しい
ひとでなし

(2013年)

あッ、雪だ

踊りつかれた枯れ葉たちが
道路の隅で休んでいる
車の窓ガラスが凍っている
郵便ポストも凍っている

あッ、雪だ
ヒラヒラ小雪が舞っている
あッ、雪だ
新しい冬がやって来た

おでんが食べたくなる冬
シチューが食べたくなる冬
鍋焼きうどんが食べたくなる冬
心が寒いから口の中は温まりたい

あッ、雪だ
ニッポンは冬から一年が始まる国
あッ、雪だ
ニッポンは冬で一年が終わる国

だから人間は寒さを借りて心を引き締め
新しい年を迎えられるのだね
そして人生は厳しさから始まった方が
冷たい世間に負けずたくましく生きられるよね

あッ、雪だ
ヒラヒラ小雪が舞っている
あッ、雪だ
新しい冬がやって来た

(2022年)

豚汁定食710円

開いてない
吉野家が開いてない
営業時間が朝8時からと貼り紙
吉野家は朝8時前の客を切ったのか
仕方ないから近くの国道沿いの食堂を探す
何軒か見つけた
だけどやってない
朝7時ってこんなに食堂やってなかったっけ
職場から離れすぎない範囲でどこか食堂はないか
あった
見つけた
古びた建物のそば屋を見つけた
なんだこのそば屋
老いた店主が入りたての若い店員に何か教えている
そのあいだ料理作りが完全にストップしている
カウンター前には注文待ちのオッサン達がたまっている
こりゃとんでもないそば屋に入ってしまった
でもここしか開いている食堂はない
コンビニの弁当なんていつでも食べられる
時には出来立ての温かい食事が欲しい
そう思いながら注文の品を探す
そば屋だからそばがメインなのだけど
定食や丼ものもあるようだ
でも鶏カツ丼に鶏カツ定食とほとんど鶏系だ
こういう時って無性に豚系が食べたくなる
豚系はないか豚系は
あった
豚汁定食710円
もうこれでいいやと注文
もちろんすぐ出来る訳がない
入りたての若い店員は老いた店主の指示なしでは動けない
実質店主ひとりで大勢の注文待ちのオッサン達を相手にしている
本来はイライラするところだけど
吉野家慣れし過ぎていた私にはあまりにも新鮮過ぎた
こんな昭和チックな回転のスローな食堂まだあるのか
豚汁定食の方
若い店員が私に訪ねてきた
生卵と納豆どっちにする
どっちにするってタメ口か
心で苦笑いしながら生卵と即答
出来上がる順番も注文順じゃないみたい
もうハチャメチャな食堂で心の苦笑いが呆れ笑いに変わった
オッちゃん釣銭が違うぞとオラオラ風の客
すいませんと平謝りの店主
兄ちゃん教育しろやとオラオラ風の客
ひたすらすいませんと平謝りの店主
そのあいだ料理作りが完全にストップしている
こういう食堂だから急いでという気持ちもスッ飛ぶ
食べた後ふいた形跡のないテーブルでスマホをいじり待つ
豚汁定食の方
若い店員がやっと出してくれた
確かにご飯と豚汁はてんこ盛りだから豚汁定食だ
ただ漬物を多く添えてごまかしている感もある
まあ生卵もついているし朝食としては合格なのだけど
710円か
よほど常連客に支えられているそば屋だな
古びた建物から見ても長年やっているそば屋だろう
710円も長年の営業の末に設定されている値段だろう
どんなに入りたての若い店員が不慣れで回転がスローでも
味さえしっかりしていて
競合店が近所になければ
客は慣れで離れない好事例だ
今度このそば屋に来る時
若い店員は成長しているだろうか
それとも辞めているだろうか
いつになるか分からないけど
しばらくしたらこのそば屋のその後を見に来たい
その時豚汁定食はまだ710円のままだろうか

(2022年)

ウマい味 エモい秋

取れたての新米で炊くホカホカのごはん
甘くてもっちり ああ ウマい味
すっかり坊主になった田んぼを見ながら
今年もあと少しか ああ エモい秋

脂の乗ったサンマに香ばしい松茸のお吸い物
季節を満喫 ああ ウマい味
急に冷え込み色づく街並みを見ながら
なんて素敵な景色だろう ああ エモい秋

芋煮会でみんなと食べるアツアツの山芋里芋
汁にとろけて ああ ウマい味
日暮れが早くなった空を見ながら
夜が長いと人恋しくて ああ エモい秋

チーズをお供に口に含むボジョレーヌーボー
上品な舌触り ああ ウマい味
クリスマスケーキやおせち料理の予約が始まった
また一つ歳を重ねるのか ああ エモい秋

(2022年)

まさか

上り坂 下り坂 まさか
あんな坂 こんな坂 まさか
オイラが生きているうちに まさか
宮城に甲子園の優勝旗が来るとは

野球に無関心なオイラでも
楽天の日本一は嬉しかったもの
野球に無関心なオイラでも
仙台育英の優勝が嬉しくない訳ないだろ

東北に運気が向いている
仙台に運気が向いている
せっかくの運気をぶち壊さず
この勢いに 乗っかろう あやかろう

男坂 女坂 まさか
乃木坂 欅坂 まさか
オイラが生きているうちに まさか
白河の関を越え優勝旗が来るとは

(2022年)

アキアカネ

急に涼しくなってきた
急に寂しくなってきた
夜明けの道を歩いていたら
急に出てきたアキアカネ

子供の時にキミを見て
とてもワクワクしたけれど
オジサンになり見るキミに
とても懐かしい気持ちになる

いつの間にか私は
人生の半分以上を歩んでいた
歳を重ねると新しい気持ちよりも
懐かしい気持ちになりやすい

あと何年私は生きられるのだろうか
あと何年アキアカネに懐かしがるのだろうか
じんわり人生かみしめながら
アキアカネと一緒に私も未来へ飛んでいく

(2022年)

雨はあなたの涙となって

私が社会人になった姿を見る寸前で
あの世へ旅立った祖母
初めての給料明細を持って
祖母が眠るお墓へ向かった
向かっている途中で急に雨が降ってきた
お墓にたどり着き
傘をさしながら給料明細をお墓に向けた
一向に降りやまない雨
千の風じゃないけれど
祖母はこのお墓に眠っているのではなく
時には雨のようなうれし涙を流しながら
あの空で私を見守ってくれているのかもしれない

私が三十路になる姿を見る寸前で
あの世へ旅立った父
あなたの最後を看取ろうと
殺伐とした心で病院へ向かった
雨で川のような道路を必死で運転した
病院にたどり着き
冷たくなっていた父に「お疲れ様」と言った
あれだけの雨が急に止み
真っ赤な太陽が照らし始めた
父は今あの世とこの世の二重生活を始めたのだ
この世と別れる悔し涙を雨のように流した後
あの世で明るい太陽で私にエールを送っているのだ

雨はあなたの涙となって
この世とあの世をつなげている
雨はあなたの涙となって
この雨はあなたのぬくもりの雨

(2022年)

ロゼワインを飲みながら

今年もサクラが散りました
寂しいのは私だけかしら
今宵も願うわ いい明日
気を紛らしに飲む ロゼワイン

赤とか白とかはっきりしなくていい
私は曖昧なロゼが好き
人生 はっきりしなくていい
曖昧が平和な時もある

ロゼのワインを飲みながら
過ぎ行く季節を噛み締める
今年も もうじき田植えが始まると
歳を重ねる自分にしみじみする

このバーはまだまだ春です
声のサクラが舞っています
あなたと語らい笑い合う
楽しみながら飲む ロゼワイン

答えを出してもらおうと思わない
どっち付かずの思いをダラダラ話したい
それを受け止めてくれるあなたがいたら
私の心は癒されるの

ロゼのワインが好きなのよ
赤でも白でもない心
人生 いつか はっきりすればいい
この世のタイミングに 身をまかせるわ

(2022年)